今月の食品衛生重点チェック項目
対策 | チェックポイント |
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加熱・冷却・保存工程を徹底的にチェック | 気温が上昇し食品の保存に注意が必要な時期のため、常温放置や不十分な加熱、不適切な保存方法になっていないか、保存温度方法が適切に行われているか、確認を徹底する。適切な保管温度を食材、食品ごとに守る。原材料受け入れ時は確認後、要冷蔵品はすぐに冷蔵庫もしくは冷凍庫で保存する。 |
ハエおよび虫の侵入、混入対策 |
気温が上がり、害虫が発生し活発的に動く時期となるため、捕虫器、防虫カーテンが設置できているか確認をする。 ドアの解放放置を禁止する。防虫網の破れがないかを点検する。納品時に異物の付着・混入がないかを目視で確認し、調理場・加工場への異物混入を防ぐ。傷み・汚れが多い食材は受け入れない。 |
食中毒への警戒 |
細菌が原因となる食中毒は夏場に多く発生する。衛生レベルの引き上げるため、ポスターや朝礼で従業員への注意喚起を行う。要冷蔵品は常温放置を禁止する。 常温で食品を冷ましたり、冷凍していた食材を解凍したりしないように周知する。常温保管の時間をできるだけ短くする。検食が-20℃で2週間保管されているかを確認する。 |
保健所夏期一斉取締の対策 | 夏の保健所の立ち入り検査に向け、収去検査の準備をしておく。営業許可証、食品衛生責任者名が掲示されているかを確認する。HACCP関係書類のチェックを行う。衛生講習会の受講ができているかを確認する。 |
冷蔵庫、冷凍庫のメンテナンス | 気温上昇に伴い冷蔵庫に負荷がかかり故障等が増加する時期のため、温度計が正しく作動しているか、保存温度・方法が適切に行われているかを確認する。冷気の流れをふさがないように、冷蔵庫の保管は容量の70%以下となっているかを確認する。 |
※書面についてのお問い合わせ等ございましたら御社担当までご連絡ください。
2024年(令和6年)全国の食中毒データの分析・傾向・総括
- 2024年は、前年並みの発生件数で患者数が若干多い状態でした。厚労省のデータでは、発生件数1,037件(前年:1,021件)、患者数14,229名(前年:11,803名)、死者3名(前年:4名)です。食中毒原因の内訳は、細菌性320件(30.9%)、ウイルス277件(約26.7%)、寄生虫355件(34.2%)、自然毒57件(5.5%)、化学物質10件(1%)、その他・不明18件(1.7%)で、前年と比較すると、ウイルスは約1.7倍に増加しており、細菌性、自然毒、化学物質はほぼ同様で、寄生虫は減少していました。患者数の内訳は、ウイルス8,685名(約61%)、細菌性4,369名(約30.7%)、寄生虫694名(約4.9%)の順で、前年よりウイルスで大幅に増加がみられ、細菌性で減少し、寄生虫、化学物質で微増しています。
- 病因物質別の発生件数の内訳は、1位アニサキス330件(前年432件)、2位ノロウイルス276件(前年163件)、3位カンピロバクター208件(前年211件)で、1位アニサキスは変わらず、ノロウイルスが増加しました。
- 患者数別では、1位ノロウイルス8,656名(前年1位5,502名)、2位ウエルシュ菌1,889名(前年3位1,097名)、3位カンピロバクター1,199名(前年2位2,089名)、で、2位と3位が入れ変わり、ノロウイルスとウエルシュ菌で増加がみられました。
- 患者数300名以上の大規模な事例は2件で、いずれもノロウイルス(2月島根県396名:製造所の太巻き寿司、8月大分県595名:飲食店の湧き水)でした。患者数100名以上では、ノロウイルスで12事例、ウエルシュ菌3事例、ブドウ球菌2事例、寄生虫1事例で、ノロウイルスによる大きな事故が目立ちます。
- ウイルスによる食中毒は、従来通り1~4月、12月に多く発生が見られました。上記のとおり患者数300名以上が2事例あり、8月にも湧き水を原因とする大きな事故が起きています。新型コロナ対策でアルコール消毒が多く行われていますが、ノロウイルスには効果が期待できません(効果が期待できる製品もあります)。調理器具類の塩素水等による消毒と、健康チェックやトイレ使用後、作業前などの石鹸による手洗いの徹底や衛生手袋の着用等が重要です。特に冬場は水が冷たいこともあって、手洗いがおろそかになりがちですから注意しましょう。井戸水や湧き水を使用時は定期水質検査や残留塩素の確認を必ず行いましょう。
- 細菌性食中毒は、一般的には気温の高い時期に多い傾向があり、令和6年は、4月~10月に230件(細菌性食中毒の約72%)の発生があり、患者数別でも、4月~10月で3,191名(約73%)を占めていました。やはりこの期間は細菌性食中毒に要注意であるとの結果でした。このことから、食中毒予防三原則、①菌を付けない(手洗い、器具の使い分けを徹底して二次汚染を防止)、②菌を増やさない(温度管理の徹底、調理後は早く食べる)、③菌を殺す(芯温75度1分以上の加熱、使用器具の塩素剤等による殺菌)を徹底する必要があります。
- 相変わらず多いカンピロバクター食中毒は、208件(1,199名)で患者数は前年(211件、2,089名)より減少しましたが、食中毒全体の約20%、細菌性食中毒の65%で、年間を通じて発生が見られました。原因食品は、鶏肉の加熱不十分や生食が多く、バーベキューでの発生もありました。業種別では、飲食店での発生(165件:79%)が多い傾向でした。
- 寄生虫による食中毒は、アニサキスが330件(患者数337名)と多く、食中毒全体の約31.8%を占めています。クドア(クドア・セプテンプンクタータ)による食中毒は23件(患者数245名)で、判明した原因食品は殆どがヒラメでした。対策は、アニサキスは-20℃で24時間以上、クドアは-20℃で4時間以上の凍結又は加熱調理をすると良いでしょう。その他、1月に輸入キハダマグロの刺身を原因とする食中毒(粘液胞子虫の一種クドア・ヘキサプンクタータの疑い)があり、患者数が111名で寄生虫の患者数増加の原因でした。
- 自然毒による食中毒は57件の発生(前年57件)で、前年と同様でしたが、「イヌサフラン」で2名、「ドクツルタケとコテングタケモドキ(推定)」で1名の方が亡くなっています。家庭での事故が多く、素人によるフグ料理、毒キノコ等の誤食が目立ちます。また、飲食店で調理したフグによる食中毒が1件発生しています。
- 原因施設別では、飲食店が圧倒的に多く548件(52.8%)、家庭108件(10.4%)、事業所等給食46件(4.4%)、販売店42件(4.1%)、仕出し屋31件(3.0%)、旅館28件(2.7%)等の順でした。
※2024年6月25日 初稿
※2025年6月24日 文書改訂
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